第3話

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 とはいえ、家に帰っても何の用意もしていないし、 この時間ではほぼ飲食店は閉店してしまっているだろう。  仕方ないかと、真っ直ぐ運ぶはずの足を途中で違う方向へと向けた。  後ろからついてくる足音が、一瞬立ち止まってから追いかけて来る。 「何処行くの?」 「コンビニ。腹、空いてるだろ」  俺の言葉に、目と口を大きく開き、 食べるのすっかり忘れてたと言わんばかりの表情に俺は小さく肩を竦めた。  食事くらいちゃんと摂れ、と言いたいところだが…。 (…邦久に注意されまくってる俺が言える台詞じゃあないな)  今度は自嘲の含んだ溜息が零れた。  夕飯の他に、恭一郎はツマミになりそうなお菓子もカゴへと放り込んで行く。 「お前、それ全部食べられるのか?」 「もちろん!いっちゃんも食べるでしょ?」 「なんで俺が……」 「僕がいっちゃんと食べたいから」  ニコニコと屈託の無い笑顔を向けて来る彼に、 俺は咄嗟に視線を逸らした。
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