第3話

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 鏡に映った久保と目が合う。 (っ……結局、ダメじゃねぇか)  どこか困ったように笑う久保。  俺は額を押さえたくなった。  水を止め、 振り返ると目の前に差し出されたタオルを受け取る。 (なんて顔してんだか…)  ――俺なんかの為に…。  タオルで手を拭きながら小さく溜息を零す。 「お前は他人のことを気にし過ぎる。まずは自分の事を考えろよ。試験に失敗しても俺は責任持てないからな」 「そ、それは……っけど!維月ちゃんが何かに悩んでるならやっぱり一緒に考えてあげたい!」  久保の思いの外強い声に 俺は目を丸くした。 (……考えてあげたいって、下に見られてるのか?俺は)  それでも、必死になってくれる久保を、 これ以上突き放す気にはなれなかった。
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