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「好きです、先輩大好きです」 「僕も好きだったよ」  先輩に勇気を振り絞り告白をしたけど、先輩の言葉で胸が軋むように痛む。  先輩の好きという言葉が、後輩としての好きなんだって分かるから。 「最初は変なのが入部してきたなと思ってたけど、関わっていくうちに真っ直ぐで一生懸命でそんな君が好きだった」 「えっと……その……」  先輩の好きだったという言葉を聞くたびに、胸の痛みが激しくなる。卒業式は笑って送り出そうと決めていたのに、上手く笑えない自分がいる。 「これからも辛い事とかいっぱいあるかもしれないけど、君ならきっと何でもやれる。だって僕の自慢の後輩だからね」 「そ……そんなの反則でしゅ……」  右手を頭に乗せられた瞬間、今まで我慢していた涙が滝のように溢れ出していく。  それを隠すために先輩の胸に強く抱きつく。これは恥ずかしさを隠すためで、決して役得とか思っていない、少しは思うけど。  先輩は私を剥がすことなく、ゆっくりと頭を撫でてくれる。その優しさに更に涙が止まらなくなった。 「嫌です……先輩……卒業しないで……」  胸に秘めていた本音の言葉も、思わず口からこぼれてしまう。これ以上先輩を困らせてはいけない、そんな事自分が一番分かっている。  だけど、それでも先輩には卒業して欲しくはなかった。 「ぐす……す……」 「やっと泣き止んだね、ほんと泣き虫の子供みたいだったよ」 「泣き虫は余計です……。それに先輩だってあの人思って時々泣いてるじゃないですか?」 「痛い所をつくね君は、でもそれだけ元気があればもう十分だね」  先輩の言葉通り一生分ぐらいの涙は出したので、心はもうクリアになっている。これなら決めていた言葉を伝えられる。 「先輩」 「どうしたの?」 「卒業おめでとうございます、あの人とお幸せに」 「っっ……」  先輩は私の言葉を聞いた瞬間、顔を真っ赤に染めていた。ほんとそんな先輩も好きだった。  私の初恋は終わったけど後悔はない。風で散っていく桜が春の匂いを漂わせた。  
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