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鋭い目の足元の山はガキどもが建物の窓からどんどん放り投げるもので、ますます大きくなっていた。既に男たちの頭よりだいぶ高いところまで積みあがっている。ガキどもだけでなく男たちも勝手に様々なものを乗せている。不安定ではあったが、鋭い目は移動しながら高いところに立ち続けていた。
少年はなかなか鋭い目のところに近づけずにいた。このあたりは野次馬ばかりではあったが、どの男たちも倒されていく元剣士を見ようと押し合いしている中、そこを少しずつ崩して前に進むのはかなり困難だった。
昂揚した表情で叫び鉄筋を振り上げる鋭い目から離れたところで山が大きく崩れた。少年は片手の元剣士が積み上げられた山を登ろうとしているのを見た。止めるには距離があった。そこまでは、すぐにはたどりつけない。
ようやく片手に気づいたガキどもと男たちが騒ぎ始めていた。男たちは怯んでいた。片手は居住区の普通の男たちとは比べ物にならない立派な体格をしている。ましてガキどもとは、勝負にならないほどの差だった。ここに至るまでに受けた生々しい傷の数々は、片手に何の痛みも与えていないかのようだった。
少年はなんとか山のそばにやってきた。
男たちを煽ることに気を取られている鋭い目は、迫われていることにまだ気がついていなかった。周囲のガキどもは鋭い目に危険を伝えようと声を上げていたが、配給所に満ちる怒号がガキどもの声をかき消していた。
片手はさらに進もうとしていた。その足元が崩れる。体勢を崩しながらもなんとか持ちこたえ、一旦地上に降り立つ。待ち構えていた太めが太い棒を思い切り突きつけた。片手は軽くかわした後、手に持った鉄筋で激しく棒を打った。太めは思わず棒を手放した。片手は太めに向けて鉄筋を構えると、恐ろしい声の量で吼えた。一旦低くしゃがみこんでから身体を伸ばすように一気に太めに近づき、鉄筋で足を打った。鉄筋が足首の辺りにめり込む。そのまま切られるのではなく、足を払われたようになり、太めは横っ飛びに吹っ飛ぶように倒れ頭をしたたかに地面に打ち付けた。
あまりの強さに周囲の男たちもガキども少年も言葉を失っていた。望遠鏡で覗く闘技大会でも滅多に見られないほどの見事な闘いっぷりだった。太めどころか、他の誰も歯が立ちそうにもない。太めの登場に気勢を上げていたガキどもは怖気づき、一歩も二歩も退き始めていた。
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