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茶色と並ぶと背の高さは倍ぐらいに見える。身体の大きさは比べようもなかった。残った片腕の太さが茶色の腰回りほどもあった。
「おまえ達が去って秩序が維持されるのであればそれでかまわない」
元剣士は無表情だった。
「そういうことにしてくれ」
茶色も少しもふざけていなかった。
茶色が手を上げた。それを合図に、元剣士の視線から身を隠そうと男たちに紛れ込んでいたガキどもがその間から続々と集まってきた。
茶色が元剣士を送り出すように手を伸ばした。
ガキどもが通路を作るように並んだ。
片手の元剣士は傷だらけの身体で顔を堂々と上げ、ガキどもと男たちを目の力で圧迫しながら大股で仲間の元に帰っていった。
茶色はガキどもを集めた。配給所の周りの建物にいたガキどもは茶色の真似をして窓から飛び降りてきた。太めが十人がかりで抱えられてきた。茶色は鋭い目も手招きした。渋々といった仕草で鋭い目が山から降りてくる。配給所の外からもガキどもが走りよってきた。
元剣士たちの隊列が留まっていた一角で投げ続けられていた瓦礫がようやく減った。男たちの隙間から、元剣士たちが片手と合流して隊列を立て直すのが見えた。
「来るか?」
茶色は少年に声をかけた。
少年は茶色の傍らの鋭い目を見た。鋭い目は顔を逸らした。太めも見た。ガキどもに担ぎ上げられた太めは痛みをこらえて目を閉じていた。
「来いよ」
茶色がもう一度少年を誘った。
少年は大きくうなずき、ガキどもの隊列に合流した。
背後の配給所はまだ舞い上がる埃に覆われている。騒ぎは既に収まっていた。
配給所は退屈な喧騒を取り戻しつつあった。
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