4-3 騒乱

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 配給所へ向かう坂道はゆっくり歩くとかなり時間がかかる。  以前のように深くフードを被った少年はため息をつきながら歩いていた。何もしなくても腹は減る。おじさんのところに戻ってから配給所へ食料を取りに行くのは再び少年の役割になっていた。  何も変わらない日常。少年は臆病者と区別がつかない。ガキどもを避けこそこそと配給所で食料をカバンに詰め込む。長居はせずにさっさと立ち去る。いつもと同じようにそうするはずだった。  もうすぐ配給所というあたりで異変に気がついた。  配給所の上には細かい埃が舞い上がり空気が白く霞んでいた。いつもより騒がしい。ケンカで盛り上がっているのとも少し違う。騒ぎの範囲が広過ぎる。  人混みが配給所の外まで広がり壁を作っていた。壁の向こうではいつもと違う何かが起こっているようだった。  壁を作る男たちの外に、ガキどもを率いる太めを見つけた。少年は急いで建物の影に身を隠す。太めは慌てているのだろうか、身振り手振りを交え大声でガキどもに指示を出していた。いつも一緒に行動している鋭い目の姿が見えないのが気になった。  配給所からは、さらに激しい怒号が聞こえてきた。ざわめく人混みを掻き分けながら進む太めとガキどもの後を追って、少年も騒ぐ男たちの渦の中に飛び込んだ。  騒ぎの中心には鋭い目と数人のガキどもがいた。  ガキどもは抱えた瓦礫を男たちに配っていた。鋭い目は鉄筋を持った男たちと隊列を組み、大声を出しながら瓦礫を別の男たちに投げつけている。  最初、男たちは遊びのつもりだった。数発の瓦礫が男たちを直撃してから目の色が変わった。男たちは血を見ると簡単に火がつく。対峙する男たちも渾身の力を込めて瓦礫を投げ返してきた。いつの間にか配給所はふたつの陣営に分かれた男たちが石を投げあい、興奮した男たちがそれを遠巻きに囃し立てている。  配給所に面した建物の窓から家具やら何やら、様々なものが降り注いでいる。誰かが中から放り投げている。チラッとガキどもの影が見えたのを少年は見逃さなかった。地面では待機していた別のガキどもが落ちてきた諸々を積み上げる。  男たちを鼓舞していたはずの鋭い目が場所を変え、家具で作られた危なっかしい山に登っていた。鋭い目は何か叫んで瓦礫を投げた。周囲のガキどもが一斉に続く。
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