4-3 騒乱

3/4
前へ
/43ページ
次へ
 鋭い目は身振り手振りも交え対峙する陣営を挑発している。飛び交う瓦礫の量が増えた。それぞれの陣営はどちらもさらに熱を帯び、休まずに瓦礫を投げる。あちこちで直撃を受けた男たちが崩れ落ち呻いていた。どちらの陣営も先に進まぬまま瓦礫を投げることだけに熱中していた。  小競り合いはそれぞれの陣営内でも始まっていた。男たちの沸騰した感情はこぶしで殴り合える近くの相手を求めていた。感情のぶつかり合いは拡大する。陣営はいくつにも別れ始めていた。  そこに、太い棒を構えた太めを先頭に鉄筋を振り回すガキどもの一団が現れた。喧嘩に夢中になっている男たちの群れに突入していく。太めの棒をくらった男たちが倒れる。ガキどもの鉄筋も男たちを襲う。男たちは突然の襲撃に驚き、一目散に逃げ始める。逃げ出した男たちが周りで見物していた男たちとぶつかり合い、そこでも悶着が起こる。  居住区にこれほどの人数がいたのかと驚くほど男たちが配給所に集まっていた。普段はあまり見かけない臆病者たちの姿も見かける。  男たちが溜め込んでいた鬱憤を壮大にぶちまけようとしていることに少年は危機を感じていた。ガキどもが何のために男たちを煽っているのか、少年には分からなかった。このままでは大変なことになってしまう。巻き込まれることは避けたい。が、もはやこの場から去ることもできそうにもない。もう少し進めば瓦礫も飛んでくる。男たちもぶつかってくる。立ち止まることができない少年は汗だくで声を張り上げる野次馬に小突かれるように押されていた。  一角で悲鳴と歓声とが入り混じった声が沸き起こっていた。少年の背の高さでは何が起こっているのか見通しがきかない。男たちを避けるように一旦人混みの外に出た。近くの建物に入り、階段を駆け上がる。四階建てだった。屋上に上がると、そこにも野次馬の男たちが集まっていた。少年は男たちを押しのけ、なんとか配給所を見下ろす場所を確保した。  悲鳴と歓声とは元剣士たちの隊列によって蹴散らされた一角からのものだったことが見てとれる。元剣士たちはいつものように配給所に秩序をもたらすべく整然と行動しようとしていたが、通常とは比較にならない騒動の中で逆に翻弄されていた。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加