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片手の元剣士が隊列を立て直そうと指示を出している姿が見える。片手の元剣士は騒動の騒動の中心にいる鋭い目に向けて元剣士たちを向かわせようと試みているようだった。しかし、元剣士達が鋭い目に向かおうと進み始めると、配給所の周囲の建物から瓦礫が投げつけられ始めた。少年の周囲の見物の男たちも手で握れる程度の瓦礫や崩落した建物の欠片をそれぞれ投げ始めた。片手の率いる元剣士たちは向きを変え、周囲の建物から遠ざかった。
「ぶち殺せぇッ!」
誰かが叫んだ。鋭い目の声でも太めの声でも無い。誰か、鬱憤を抱えた誰かの一言が、男たちの矛先を一斉に元剣士たちに向けさせた。敵を見つけた男たちは、もはや小競り合いのことなど完全に忘れていた。
元剣士たちの隊列に向けて瓦礫が降り注ぐ。元剣士たちは完全に包囲されていた。瓦礫は容赦なく元剣士たちを打つ。突破口を開こうと移動する隊列は、激しく投げつけられる瓦礫で方向を変えざるを得なくなる。やがて、ひとり、またひとりと直撃を受けた元剣士たちが倒れ始める。
積み上げられた家具の山の鋭い目も元剣士たちに向けて男たちを煽っていた。配給所は一体感に包まれ始めていた。血に飢えた男たちが元剣士たちに飛びかかるまで、さほどの余裕は無さそうだった。
誰もが元剣士たちの隊列を見ている中、少年は片手の元剣士の姿が見えなくなっていることに気がついた。片手の元剣士は隊列とは少し離れた場所にいたはずだ。少年は建物の上から片手の元剣士を探した。
片手の元剣士は、ひとり、剣の代わりの平たく叩いた鉄筋を使って男たちの間を掻き分けていた。その向かう先に気がついた少年は、急いで立ち上がり、配給所を目指して建物を駆け下りた。
片手は鋭い目をめざして一直線に進んだ。
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