第二章

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 何故、俺がジュースを渡したと分かったのだ。  面と向かって手渡す事に面映ゆさを覚え、どうにか誤魔化せないかと必死に考えた結果がこれだった。先輩との仲が上手くいった礼だとは、恥ずかしすぎて言えそうになかったから。 「……別に」  唇を尖らせた俺の腕を、宮田はいっそう強く掴んだ。 「お前が他人を気遣う訳がないだろ。話せ」 「……はあ? お前は俺をなんだと思ってんだ! 薄情者みてぇな言い方しやがって! お前に感謝しようと思った俺が馬鹿だった! さっさと返せよ、それ!」  がるる、と噛みつく程の勢いで吠える俺。宮田の手にしたジュースに手を伸ばすが、いとも簡単にかわされ、再び強い眼力に当てられる。  我が失言に気がついたのは、その後に出来た沈黙の最中だった。 「……感謝?」  知られたくなかった感情が、宮田の口から発せられる。  恥ずかしい、と思った。  顔から蒸気が出そうなくらいに体温が上がる。先輩を目の前にした恥ずかしさではない。まるで、街中を裸で歩かされているような羞恥が俺を襲うのだ。 「上手く、いったのか?」  ゆっくりと、宮田が腕を放した。このまま走って逃げようかとも思ったが、俺は今、丸裸なのだ。  実際に裸になっている訳ではないのだけれど。俺の脳内はそう認識していて、走り出す事に気が引けた。  宮田のせいである。何もかもコイツが悪い。やっぱり、宮田に感謝なんてするんじゃなかった、と。俺は真っ赤になった顔を隠すように俯いていた。 「そう、か」  何も言わない俺の何を悟ったのか、宮田は呟くように言った。なんとも言えない空気が俺達を包む。  KYだと散々言われる俺だが、この時に限って、なんとなく逃げ難い空気を感じ取っていまい、いっそう身動きが取れなくなった。  ――そんな時。急に教室から黄色い声がちらほらと聞こえ出す。なんだなんだと、宮田はそちらへ意識を逸らしたようだが、俺は別に女子達が何に騒いでいようが興味はない。  今のうちに、こっそり逃げてしまおうと、ゆっくり足を宙に浮かせたのだが。 「あ、湯原くん」  ピタリ、と俺の体が動きを止めた。
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