第一章

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 大きく叫び声を上げた俺は、まるで孤独なライオンだ。真っ赤に染まる夕日に向かって吠えれば、大きなため息が湧きあがってきた。  俺の煩悩が、神の申し子とも呼べる先輩の行動を理解できる訳がない事は分かっていたはずなのに……。  今更ながら、自分の低能加減に呆れ、ため息が出てしまうのだ。  ちなみに、頭を抱えてその場にしゃがみこんだ俺が注目の的になっていた事は、次の日にクラスメイトから聞いた余談である。 *  ――放課後、学校の屋上で待っています。  俺は、きのう先輩の下駄箱に入れた手紙の内容を思い返していた。名前は書いていない。サプライズ、なんてちょっとカッコ良い事を考えていたから……。  屋上に呼び出して、告白をするつもりだったのだ。佐々木先輩に。  体中の勇気を振り絞っての行動だった。下駄箱に手紙を入れるだけでも心臓が破裂しそうだった。その時の自分を思い出すと、今でも緊張のあまり心臓が大きく動く。  放課後の屋上を差す夕日。先輩の頬が淡く染まっているのは、夕日のせいだけじゃないだろう。俺の告白を受け入れ、恥ずかしそうに頷く先輩は、まさに大天使。そのまま、俺は先輩の柔らかい唇を奪うのだ。二人の愛を分け合うように、優しく、激しく……。 「あぁ~……なんで帰っちまったんだよ~」  休み時間。俺は頭を抱えて机に伏していた。立ちあがる元気すら湧かない。決死の告白からのゴールインが、頭の中で何度も流れていた昨日とは違う。なんというか、全身の力が抜け、絶望に近い感情が胸の中でモヤついている。 「どうした。元気ないな」  頭の上から降って来た宮田の声に、俺は渋々顔を上げた。 「なに。何か用かよ」 「人が心配してやってるって言うのに、つれないな」 「ほっといてくれよ、バカ」  俺はぐしゃぐしゃと頭を掻く。
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