第一章

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 そんな俺が、先輩を好きになったのは、もう一年以上前の事だ。衝撃的な運命の出会いは、入学式だった。  それから、先輩に近づくために必死でリサーチをして、毎日のように先輩の行動を観察した。先輩と会話が出来るようになったのは、年が変わった一月の事である。  一、先輩の好みは、優しくて気の利く子。  一、先輩の好みは、メイク薄めの派手過ぎない子。  一、先輩の好みは、趣味が合う子。  一方の俺は優しくもないし、他人に気をまわすほど、周りに興味がない。見た目だって、この髪色からして派手ではないと言い切れないだろう。  それに、先輩の趣味は読書である。活字を目にした瞬間に、頭が拒絶反応を起こしてしまう俺には、読書なんて出来やしない。  天地ほどの差だ、と思う。月とすっぽん。この言葉は、こういう時に使うのだろうと、少し勉強になった。  ただ、例えすっぽんだろうが、すっぽんぽんだろうが……俺の先輩への気持ちは変わらない。好きで、好きでどうしようもないのだ。  俺は、この愛の大きさだけで先輩を振り向かせると心に決めた。好みなんて関係ない。そう。俺の告白を聞けば、先輩だって俺の事を好きになってくれるに決まっている!  先輩に対する気持ちは、きっと今までの恋とは違う。それに気付かせてくれた宮田に少しばかり感謝の意を示したいと思う。明日、ジュースくらいなら奢ってやっても良い。  俺が先輩と上手くいけばの話だ。万が一、いや、億が一。俺と先輩が上手くいかなかったら、宮田を責めよう。お前が背中を押したからだって、殴ってやろう。  きっと宮田は、文句を零しつつも俺の拳をさらりとかわすだろう。一発殴らせろと怒鳴り散らした所で、素直に頷くようなヤツじゃない。  宮田はそんなヤツだ。  何度殴りかかろうが、かわされ続ける苛立ちの矛先を何処に向ければ良いのか。  否、失恋の痛手が、そんな苛立ちに緩和されるなんて悲しい話があってたまるものか!
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