35 箱

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「昼飯…食べないのか?」 一定の距離を取って塀に凭れかかる イチは瞼を閉じたまま息を吐いた 「…お腹空いてない」 「そうか…」 ワイシャツの袖から出るイチの腕が前よりも細く見えた 「…コウタ」 瞼を持ち上げたイチは俺を見上げる 「さっき薬飲んだから…大丈夫だよ」 「…」 塀から移動してイチの前に座る そっと頭に触れるとイチは息を吐きながら俺の肩に顔を埋めた 最近見つけた事だが、イチは薬を飲んだ後、数時間は触れても平気らしい 前から誰かに触れる事が多かったイチが停学してからは発作のせいか、触れてくることが減っていた だからこの事を見つけてからのここ数日はこうやってイチは自分から触ってもらうのを求めてくることが増えた それでもイチは自分から誰かに触ることはなかった 「イチ…手、回して」 「…ん」 髪を解かしながら言えばイチの手が背中に回る 「大丈夫か?」 「うん…ありがと」 顔を上げたイチは笑顔で俺を見る それでも俺にはイチが依然と同じように笑ってるようには見えなかった 「コウタさん」 テラスに現れたメンバーに振り返る 「結果貼り出されました」 「わかった」 立ち上がってイチを見ればイチはゆっくり立ち上がった
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