36 口づけ

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「ん…?」 瞼を閉じたまま手を動かす 「くそ…」 遠くで震えるイチのケータイを取りにベッドから起き上がった 「もしもし?」 『…誰?』 「んぁ?…アンタこそ誰?」 ベッドに戻って布団に潜る 『イチ君は?』 「え?あぁっと…」 横で寝息を立てるイチの髪に触れる 息を吐いたイチは俺の胸元に顔を埋めた 「イチ起きて…電話」 「ん…っはい?」 俺からケータイを受け取ったイチは瞼を閉じたまま電話に出る 「ぁ…先生」 瞼を持ち上げたイチは頭が痛いのか眉間に皺を寄せてチラリと俺を見た 「っコウタ!?ぇ…え!?」 俺と自分を交互に見るイチは電話を耳に付けたまま体を起こす 「なんで…なんで俺たち裸!?っ…痛てぇ」 頭を抑えたイチは意味がわからないという顔で俺を見つめる 「…先生ごめん…また後で電話します…」 電話を切ったイチは寝転ぶ俺を見下ろした 「なんでいるの?…てか、なんで裸?」 「…忘れたのか?」 真面目な顔で言えばイチは視線を泳がせる 「…覚えてない」 「イチ」 ベッドを叩けばイチはゆっくり俺の横に寝転んだ 「気持ち悪くない?」 「あれ…平気だ」 イチは手を伸ばして俺の頬に触れた
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