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よく眠り、よく食べ、よく動き。
これで成長しない訳があろうか。
私はすくすくと大きくなった。
最近ではヒトから
「コベ」
と呼び掛けられる事が多くなった。
それが私の、名前であろう。
母は「ちゃー」と呼ばれていた。
ヒトは良い。幼かった頃よりもずっと、そう思う。
鳴けば反応し、近付けば撫でられる。
腹が減れば食事が出てくる。
素晴らしい毎日に感じられた。
しかし私はその頃から
透明な壁の向こうを知りたいと思い始めていた。
雨が降ったり、風が強かったり、時には白い雪が降る。
日々変化しているのだ。
空を飛ぶ生き物や高く跳ねる生き物など、
私の本能を駆り立てる物ばかりだ。
私は透明な壁に手を当てる。
時に爪を出して軽く引っ掻いてみる。
ヒトに見つかれば、だめよ、と言われて
その壁から離される。
この室内を見回してみても、なんの変化もない。
机は走り出さないし、
本は飛ばない。
ああ、なんて退屈なのだろう。
食事をし、できるだけ高いところへ登り、眠る日々が続いた。
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