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20歳の7月僕は初めて恋に落ちた
そう、君に恋をしたんだ。
今年の7月は台風が多かった。
習慣の天気予報は毎日雨マークだった。僕は隣町の図書館脇のカフェでバイトをしていた。いつもと変わらない香ばしいコーヒーの香りとレトロな家具に囲まれて、今日も何気ない風景に安心感を感じていた。カフェのオーナーは僕のことを孫のようにおいしいコーヒーの挽き方を教えてくれた。
「雨宮くんは、コーヒーはどんな時に飲むのが好きなんだい?」唐突すぎる質問にコーヒーカップを洗う手が止まってしまった。
「僕は、心が穏やかな日に飲むコーヒーが好きです。」クラシックのかかる店内で、心があったまるような会話が僕は好きだった。
カシャーン・・・扉が開く音がした。
「いらっしゃいませお好きな席どうぞ」にっこり笑う僕には、今まで感じたことのない鼓動をこの時感じていたんだ。
「お冷どうぞ」店内端の窓辺側の席に、びしょ濡れに濡れた女の人が座っていた。
「ホットのアメリカンを」小さな声でメニューを頼んだ。
ふぅ...そうため息をついて女の人はタバコに火をつけた。
「かしこまりました。あの・・・タオルお持ちします」僕はとっさにしゃべりかけた。濡れた髪の毛の隙間から大きな瞳でにこりと笑って彼女はお辞儀をした。
「オーナータオル借ります」僕は何かにかられるように店内奥の扉を開く。
「どうぞ」「あ、ありがとうございます」店内には静かなクラシックとコーヒーを挽く音だけが響いていた。
「雨宮君、ご苦労様上がってください」オーナーの声でバイトの終わりに気づく。エプロンを外しカウンターから出ようとしたとき、「今夜は大雨になるそうだから傘を持っていきなさい」僕のビニール傘をみたオーナーが優しい笑顔で紺色の傘を差しだしてくれた。「ありがとうございます。お疲れ様です」
カシャーン・・・僕は笑顔のオーナーに軽く会釈をして、雨空を一度見上げてバス停に歩き出した。
運命の針が動いていることなど知るはずもなかった。
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