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25歳の7月私は初めて恋を知った。
そう、君に出会って恋を知ったんだ。
今年の梅雨は台風ばかりで、傘を手放せないでいた。「もう7月なのに」いつも朝になると雨音で目が覚めていた。通いなれない国道14号線のわき道を入ったところにある図書館に今年の4月に配属が決まった。
私がこの町に来てからというもの、雨の日ばかりで少しだけ心が沈んでいた。
お昼休み図書館内の1階フロアのベンチで、形の悪いおにぎりを食べるのが私の定位置だった。毎日いびつな形をしたおにぎりを見て「もっと、お母さんに料理教えてもらえばよかったな」そう思う毎日を過ごしていた。
「宇川さん、今日もかわいらしいおにぎりね」職場の館長さんは優しくて、心があったかくなる言葉を私にくれた。「料理なんて全くできなくてお恥ずかしい限りです」私の少し照れた言葉に「手作りおにぎりってその人の気持ちが入るから、絶対においしいものなのよ、お食事中にごめんなさいね」笑顔で私の肩をポンとたたくと手を振りながら図書館内に入って行った。(そうなのかな・・・)館長の言葉が嬉しくてにっこりしてしまう。
ピンポーンピンポーン(あ、館内放送だ)
_天気が大荒れになる予報が出ています。本日午後は閉館させていただきます_
(そうだ、今日大雨になるんだっけ)足早に館内に戻る。
「あ、宇川さん、さっきの館内放送聞いたかしら?今日はもう閉館になるのだから帰りの支度をして」館長さんの言葉に軽く会釈をして帰りの準備を始める。
「うちの車でおくるわよ」「いいわよ、うち近いもの」「帰りにうちに寄らない?」職場の先輩方は早帰りになることをなんだか嬉しそうに、午後の予定を立てていた。「宇川さん、お疲れさま」「お疲れ様お先に」「あ、お疲れ様です」私も早く帰ろう。
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