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「違うの、ごめんなさい。ただ・・・」私は言葉にならない気持ちに泣く事しかできなくて、それでもこの男の子は「じゃ、よかった。あ、あと30分もバス来ませんね。」そう気にしなように私笑顔を見せてくれた。 「雨って僕すきなんですよ、降り終わった後、虹が架かるじゃないですか、新たな始まりの門出のアーチみたいで大好きなんです」そう彼は言いながらきれいな傘をさしながら「隣座っていいですか?」そう言いながらベンチに腰を掛ける。 「お兄さんは純粋だからそう思うんですよ」私が笑いながら意地悪を仕掛けると、男の子は「でも、お姉さんにも見れますよ」根拠のない言葉なのに何か胸の奥できゅっと締め付けられるように思えた。 あまりにも彼女が無理して笑うから、僕も願いを込めて言い切ったんだ。「この雨が止んだら、お姉さんにも見えますよ」だって僕は知っていた、誰もいなくなった図書館に一人残って本を拭いている姿を見たことがあった。鼻歌を歌っているような、夕日の当たる窓辺の一部を開けまるで天使のような笑顔でいたことを見たことがあったんだ。だから今日泣いている理由が、パンプスじゃないことなんて最初っからわかっていたんだ。でも、僕は彼女に話しかけてみたかったんだ。 「そんな奇跡あったらいいね」そう笑いながら彼女は少しだけ直したパンプスを見ながら目を伏せてしまった。(あ、この人の隣って安心するな)僕は少し目を閉じてこの幸せをかみしめていた。
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