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目を開けると━━いや開けていた目に入ってきたのは血みどろになって横たわっている巨漢の男と、心配そうに見つめる赤髪の少女。
立ち込める煙と━━1つの銃だった。
銃を撃つ時のように一瞬で記憶を失った感覚。
「……?」
俺の右手は前方に銃を構えていて、徐々に脳が鮮明になっていく。
横にいる少女はこちらを覗き込み、笑顔でこちらに話しかけてきた。
「……一樹…?私の事……わかる…?」
「君は…?」
赤髪の少女をよく見ると身体中ボロボロで、足から血を流していた。
「…だよね、覚えてるわけ無いよね。だって一樹…絶対嘘つかないもん。」
彼女は俺に笑いかけてくれたが、その笑顔はなにかを諦めたような、無理矢理捻り出したような━━そんな笑顔だった。
「なんでそうなるって分かってたのに…そんな銃を使っちゃうのさ…」
ぽつりと少女が呟いた。
「………」
目の前で横たわる血まみれの男。
俺は人を撃ち殺したのか…?
手足が震える。
…人が…血が出て…動かなくて…俺が…それを…。
ガタッという音がして銃が右手からずり落ちる。
「…俺はっ……俺は━━」
…唇に柔らかい感触…
視線の奥で紅色の髪が揺れる。
「ぷは…!」
少女は涙を流していた。
「…一樹はっ……一樹は…あいつから私を守ってくれたんだよ…?その銃でっ!」
俺の肩を乱暴に揺らし、少女は喋り続ける。
「覚えてないかもしれないけどっ…私は…あんたと恋人だった…!…覚えてないかもしれないけど…私は…一樹の事…が大好きだった…!……あんたも私のこと好きって言ってくれた…!」
深呼吸をする。
「━━もう…全部終わったから…帰ろ?…私たちの家に…ね?…」
「あ、ああ……」
必死に俺を元気付けてくれた彼女に…俺は何も出来ない。
それだけで…涙が出てきた。
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