序章 尊き師の遺言

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彼はその切れ長の目を閉じて思考する。 しばらくしてからその血のように赤い瞳がチェス盤を一瞥すると、再びチェス盤に手を伸ばした。 すらりと伸びた細い指先がどこか洗練された動きで黒のルークを掴むと動かした。前へ、敵地の一歩手前で睨みをきかせる。次はお前の王をとってやろうと。 そこに白のポーンが現れる。馬鹿めと言わんばかりに黒のルークをチェス盤から追い出して。 だがそこに黒のポーンが重なった。誘い込まれたのはお前のほうだ。 そこからは黒と白が激しく交差を重ね、最後に黒のナイトが駒を飛び越え、王の喉元をとらえた。 王の移動先で待ち構えるもう一つの黒のルークがほらね、とるって言ったでしょと立ち塞がった。
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