空白のログブック

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俺と彩は、高校の校舎を一度だけ振り返ると、学校の近くにある、いつものスポーツ用品店に足早に向った。彩のキャンプ用品をそろえるためだ。 現金はあまり持っていなかったが、父親から借りてきたクレジットカードで買い物をする事にしていた。 まず始めに、彼女には少し大き過ぎるが、俺のよりは幾分小さめな登山用のバックパックと、オールシーズンの寝袋を選び、直にでも履けるハイキングシューズを探し出した。 あと、厚めのレインコート、念のための防寒着、ポケットの沢山付いたズボンと上着、その他必要な衣類と細々とした、コンパス、水筒、防水マッチ、ライター、振ると充電できる懐中電灯。それと、腰に付けられるケースに入った刃渡り十五CM位のナイフと折りたたみのポケットナイフを二つずつ、それに小さな斧を一つ。 それらの支払いを済ませた後、袋には入れてもらわず、プライスタッグ等を外して、全てを買ったバックパックに詰め込み、レジの横に飾ってあったネックレス型の小さなナイフもついでに購入して、それを彩の首に掛ける。 そうしていると、顔見知りのいつもの店員が、 「今回は、二人で撮影旅行?いいねぇ!登山それともキャンプ?」とうらやましそうに聞いてくる。 「まぁ、そんなところです。大学が始まるまで少し時間があるので、、、ちょっと奥の方まで入ってみようと思いまして。」と誤魔化して答え、そのバックパックを左の肩に背負い、彼女の手を取って店を出て、また足早に次の店に向う。 彩が歩きながら心配そうな顔で、 「優、電車まであと三時間位しかないけど、大丈夫?」と聞くので、 「後は、食料と、雑貨、医療品位だから、心配しなくても、時間は十分あるよ。ニ時間位で中央の駅まで行けば、食事も摂れるんじゃないかな。」となんとなく落着かない気持ちを隠して、笑いながら答える。 すると彩は買い物リストをチェックしながら、 「優の荷物は大丈夫?ちゃんと用意してあるの?」とまた聞いてきた。
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