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私はただあんぐりと口を開ける事しかできません。
「ーーしょせんは男の人よねぇ~」
何でもないことのように言ってのけると、口もとを袂でかくしてころころ楽しそうに笑うお姉様。
私などもう、耳まで熱いというのに。
「あなたはいかが、こう子。私ほどの思いをもってその方にぶつかったと、真に言えて?」
私には返す言葉もありません。
「まだ闘志が残っているのなら、あなたにこれを預けるのだけど」
「と……」
闘志って、お姉様。
ああ。お姉様にとって恋は、真に戦いだったのでありましょう。
お姉様は、右手首にいつも巻いてらっしゃる真っ赤な帯留めを外されました。
それは心中なさった時に、お相手の左手首としっかりと結んでいらしたもの。
お父様がいくら捨てろとすごまれても、頑として手放さなかった激しい愛のあかし。
「そんな、それはお放しになってはいけません!」
「いいのよ。私にはもう、これがあるもの」
いたずらに笑むと、ふところから一通の文を取り出される。
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