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「あいつらはいい加減で自分勝手なんだ。理性って言うものを手放して、怨念の塊になってとどまってしまったものも、たくさん居る。
いちいち関わってたら、これから先大変だよ。人が良すぎるのも大概にしないと」
リクは静かな口調でそう言った。
玉城は落胆を持て余しながら、目の前の青年を見返した。
物心ついた頃からその厄介な連中に翻弄され、付き合い方を模索してきたこの青年は、しっかりと自分の立ち位置を確立している。
けれどもやはり玉城の中の正義感がそれを疎ましく感じた。
「冷たいよな。リクは」
玉城はポツリと言った。
リクがムッとしたような鋭い視線を向けてきたのを感じたが、玉城はあえて目を合わさずに席を立った。
「悪かった。忘れていいよ。自分で考えるから」
そう言い残すと玉城はまだ座っているリクに背を向けてラウンジを後にした。
相談しておいてあの言い草は無いなと自分でも思ったが、やはりリクの冷たさは気に入らなかった。
少しは考えてくれると思っていたのに。
先程まで心地よい明るさを提供してくれていた太陽がどんより蔭を纏いはじめた。
急に夕刻になったような薄暗さだ。
リクの機嫌を損ねるといつもこうだな。
もう少し怒らせたら雨でも降ったのかもしれない。
自分自身冗談とも本気とも分からない事を思いながら、玉城はエレベーターに乗り込んだ。
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