お姫さまの欲しいもの

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「おはようございます。ミーアお嬢様。」 朝か…。若いメイドが部屋中のカーテンを開けてわたしのベッドまで歩いてくる。 「よく眠れましたか?」 「うん、おはよう。」 わたしの朝は毎朝こんな風に始まる。 よく眠れましたか?って質問は必要ないんじゃないかな。一度小さい時(小学生のころ)に「いいえ、全然寝足りないわ。」って駄々をこねたことがあったけれど「それなら今日は早く寝ましょうね。」って言われただけで二度寝なんかさせてもらえなかったもの。その日はお父さまの大事なお客さまがいらしてて結局遅くまで今日の外交問題について聞かされた。 言っても無駄なことがあるって知ったのはその時ね。 「お嬢様。お水をどうぞ。」 「ありがとう。」 わたしはメイドからコップを受け取ると、反対側を向いて少しずつ飲んだ。 というのも、何故か綺麗な花びらが浮かんでいるからだ。 寝起きのぱっとしない頭でも、花びらが口に入ってしまうと出すときにぺっぺっと汚いことになるのは分かる。 だから口に入ってこないように、できるだけ少しずつ、くちびるをあまり開けずに飲まなければいけないのだ。 そんなに面倒なら「これ入れないで。」って言えば良いのにって思ったあなたは幸せものね。 わたしは自分の言葉の影響力を知っている。もしわたしが「お水に花びらは要らないわ。」と言えば、このお花を育てている専属の庭師が職を失うということになるのだ。 わたしの口に入っても大丈夫なように、お庭の花とは別の育て方をする庭師がまた他にいて、その人にはまた家族がいる。 わたしはそういう身分に生まれてしまったのだ。
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