明治発熱 前編

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「――え、わ、 わたくしでございますか!?」 ついきょろきょろと 辺りを見回してしまいます。 「へえ。しゃべり方、かわいい。 ひとり?」 「えっ、いえその、」 ――連れを待っています。 と言いたいのですが、 私の肩越しに 大木へ手をついたその人が、 綺麗なお顔をずっと 近づけてくるので 驚きのあまり声が出ません。 露店の明るさが その人の背を照らして、 私の前に濃い影を落とします。 どくん、と胸が脈打ち、 硬直した様に足が動かず…… 気づけばすっかり真暗がりの中、 「――少し遊ばない?」 そうおっしゃる口元が、 唇に触れそうなほどに近づいてき――。
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