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「――え、わ、
わたくしでございますか!?」
ついきょろきょろと
辺りを見回してしまいます。
「へえ。しゃべり方、かわいい。
ひとり?」
「えっ、いえその、」
――連れを待っています。
と言いたいのですが、
私の肩越しに
大木へ手をついたその人が、
綺麗なお顔をずっと
近づけてくるので
驚きのあまり声が出ません。
露店の明るさが
その人の背を照らして、
私の前に濃い影を落とします。
どくん、と胸が脈打ち、
硬直した様に足が動かず……
気づけばすっかり真暗がりの中、
「――少し遊ばない?」
そうおっしゃる口元が、
唇に触れそうなほどに近づいてき――。
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