明治発熱 前編

22/23
77人が本棚に入れています
本棚に追加
/414ページ
船に乗れるか見てくるから そこで待ってろと 鷹雄様がおっしゃるので、 私はひとりぽつんと 取り残されてしまいました。 暇ですわ。 あまり離れなければ、 ちょっとくらい遊山しても よいですわよね。…… 私はすぐそばで 甘い匂いをさせている飴屋で 薄紅色の桜飴を一袋買い、 そばの大木にもたれかかって 足を休めました。 と、あちらに 四,五人で歓談されていた 若い男性の内のひとりが、 お友達に何か話された後で こちらに歩いてきます。 藍染の浴衣を着崩したその人は、 役者のようなお顔に 長めの髪をおろして、 私より年上に見えます。 素敵な方ねと思っておりますと、 「君、どこから?」 と突然声をかけていらっしゃるので びっくりして、
/414ページ

最初のコメントを投稿しよう!