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鈴が鳴る。
一つ、二つ、三つ、四つ……ころころ、ころころ──七つの鈴が鳴り響く。
そのたび坊やはクスクス嗤う。
「もっともっと」とせがむように、「早く早く」と急かすように、「ちょうだいちょうだい」とねだるように、未だ未熟なその手を伸ばす。
しかしその手は届かない。
虚空をさ迷い崩れるだけ。
何度伸ばしても、坊やの手は揺り篭の中で蠢くだけで、決して鈴には触れられない。
──そう、まだ早い。
坊やは未だ揺り篭の中。
一人で立つこともできない無垢なる赤子。
穢れを知らぬ真白き命。
たった一つの、雑じり気の無い純なる意思。
未熟な坊やに、この鈴は飲み干せない。
……だけどいつか。
やがて遠くない“いつか”。
坊やのその手は鈴へと届く。
一つ千切り、二つ千切り、三つ、四つと鈴を執る。
五つ、六つを手に入れて、七つの鈴を食んだ時、揺り篭は満たされ、坊やは世界を見るだろう。
だから今はお眠り、坊や。
いずれ来るべき祝福を待ちながら、七つの鈴へと手を伸ばしながら。
今はお眠り、愛しい坊や。
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