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天上界、神々が住まう楽園ーエデンー。
その一角に、物々しい雰囲気が漂っていた。
「何をしたかおわかりでしょうか?」
「大方検討がついてます、ハイ・・・」
見目麗しい女性のすらりと伸びた腕の先、禍々しい大鎌を喉元に当てられ青ざめる、これまた見目麗しい長髪の男。
「我々の主、最高位である創造神であわれる貴方様が。まさかとは思いますが、下々の手を煩わせるおつもりですか? 」
にこりと微笑むも、彼女からの圧に耐え切れず寒気が収まらない。
身震いしながら神は頷く。
「世界の不均衡。エネルギーの消失。それがもたらす結果を確認した今、引き返せない所まできているのが現状なんだ。どうにか目を瞑ってくれないだろうか」
下々に懇願するとは手の施しようがないなと、サリエルは主に大鎌を下し溜息を吐く。
「そもそもの元凶は貴方様にあるかと」
「うぅ…、理解している。ただやめれないのさ。それが僕のアイデンティティでもあるから」
「貴方様の目と頭脳はただの飾りでしたか。おおよその推測は可能でしょうに。神の名が廃ります」
「身に染みる痛いお言葉」
「……彼一人の人生を代償に、得られる対価はいかほどなのでしょうか? 」
「未知数としか答えようがない。しかし、僕の罠にはまってくれるとは……欲望を刺激されてこうもあっさりとは。人類はいつまで経っても可愛いねぇ」
床に魔方陣が描かれ、その上に人影が浮かび上がった。サリエルの分身体が、上手いこと彼を誘導したようだ。
「来たみたいだね」
「分身体とはいえ、私自身です」
失敗はいたしませんと、ムス顔で睨む。
魂の情報構築が済み、黒髪童顔低身長が姿を現した。まだ脳がうまく機能出来ていないのか、焦点が定まらず空虚だ。
「ようこそ神の世界へ。僕は君をここへ導いた犯人、神だ」
手を差し伸べそう声をかけると、指をあらぬ方向へ折られた。
「いっっ……覚醒おめでとう」
まさかの行動と痛みに声をあげそうになったが、我慢する。隣でその様子を見ていたサリエルちゃんが震えている。うまく笑いを誤魔化そうとしても、僕にはお見通しだよ。
彼に向き直り、意外に攻撃的だと感心した。これなら、僕の計画も躊躇なく遂行してくれるかもしれない。期待に胸が膨らみ、それが表情に出てしまい、にやけた。
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