第1章

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 半年ほど前、俺は記憶喪失だった。 「だった」というのは、既に名前や住所、職業といった生活に必要不可欠な情報はだいたい思い出しているからだ。  とはいえ全ての記憶が完全に戻ったわけではなく、作りかけのジグソーパズルみたいな記憶の欠落がまだあちこちに残っている。  そういう欠落はいつも生活している時には気にならなくても、時おり何かの拍子にポンと浮かび上がってきては、俺を悩ませるのだ。
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