卒業、または『さよなら』

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黒板を見て、私の学校生活が頭を巡った。この一枚の板に私の青春が凝縮されて詰め込まれているのだ。 私の目には涙。手には卒業証書。 私は今日、卒業する。 「お前、何泣いてんだよー」 からかうような声が聞こえ、ふと振り向くと幼馴染のタクミがいた。ずっと友達だった彼に私は微笑む。 今この瞬間だけは自分に素直になれた。 「ねえ、タクミ」 私は涙と共に声を漏らす。 「ん、なんだ?」 そう言う彼は夕日に照らされ顔がよく見えない。 この素直な瞬間に、ちゃんと思いを伝えるために。私は彼に近づいて―――― 「……あれ、眠い……」 急な睡魔に襲われ私は目をこする。 べったりと、赤。 …………。 私は目を覚ました。目からは血。手には拳銃。黒板の幻想は消え、タクミは私の妄想と崩れる。 もう全身にウイルスが回ったようだ。 「皆、私もそっちに行くよ」 そう呟くと、私は引き金を引いた。
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