第1章1「預言を預言する預言」

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 アポロン神が地上の人間を理由なく虐殺する話や、神々が哀れな者に慈悲を与える話は『馬鹿か』と笑い飛ばすようになって、ゼウス神が美女を掠奪し、犯して子供を孕ませたり、怒りや嫉妬一つで、誰かが死んだり消されたりする………不穏当な話の方が面白くなって、愚かしくも上級なる神へと挑んでいく英雄の死に、共感した。  男は女の運命を翻弄する。  神話ではそういう事になっている。 (あたしが男たちを翻弄すんだよ) (国を、男を、あたしが動かせたらどれだけ笑えんだろ……)  少女シビュラの抱く、外界にいるという『男』に対する憧れや好奇心は、深窓の姫君よろしく清楚ではなかったが、大雨の後、何処と言わず彼方此方(あちこち)の腐った樹木から茸が生えてくるように、音もなく全身に蔓延していた。
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