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正午にビル全体にチャイムが鳴る。
「よいしょ、ランチ行ってきます」
私はデスクの上のPCを閉じるとそそくさと支度をして出て
エレベーターまでいつもより早歩きに、
歩きながらコロンを付け直してエレベーターの到着を待っていた
----チン-----
エレベータの到着にすっと乗り込むと桜井さんが乗っていた。
にこっと目が合うと一番奥の端っこに立つ桜井さんの隣に私は立った。
右手が暖かい手で触れた。
でもしゃべったらいけない、声をかけてはいけない、
だって私たちは不倫だから。
先にエレベーターを出ると、携帯にメールが届いた。
(会社を出て左に進んで初めの信号を右折したとことに
コインパーキングがあるからそこに止めてあるから待ってる)
そわそわした気持ちで少し足早にパンプスの音が
軽やかなリズムを刻みながらにっこりしたほほを財布で隠しながら歩く。
「あ、あれだ」
すっと、後ろの席のドアが開いて私はすっと乗り込む。
「会いたかった」桜井さんの声に
「私もランチの時間が待ち遠しくて待ち遠しくて」
そう話す私の頭をポンポンと触れると、
「さぁ、出発だ。和食屋でいいの?」笑いながら車は発信していく。
「桜井さんは何か食べたいものはないんですか?」
「そうだな・・・僕は君と食べるご飯ならなんだっておいしく感じるからなんだっていいんだよ」
そう言いながらバックミラー越しににっこり笑った。
それからどこに向かうのかも決まらないまま、
路肩にあるコンビニでサンドウィッチとカフェオレを買って
助手席に誘導されてドライブを始めた。
ランチ中なんて気にもならないくらい、たわいもない話をしてた。
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