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「そうだ、君名前は?」
あまりに今更感があっておかしくてすっと胸の小さなポケットから名刺を出して「(株)ミュートの内田奈々です。」渡した名刺を見て
「あぁだから、いやどこかで見たことある子だなって思ってたんだ、同じビルだったんだね」にこっと笑って
「じゃぁ改めて、よろしくね」そう言い終わるとぐぅーっとおなかが鳴ってしまい真っ赤になってると「あははは、君はもうほんとうに。食べよう食べよう」大笑いをしながらいうもんだから、もぉ最悪です、頂きますそうにこりと笑って食べる。
「あぁ、すごい美味しいです」あまりにおいしくてにこにこしてしまった。
「よかった、奈々ちゃんが笑ってくれると無邪気で嬉しいね、いっぱい食べて」サラッと名前を呼ぶから恥かしくて下向きに黙々と食べてると
「体調わるいか?大丈夫か?」そっとハンカチを出すから
「桜井さん、そういうの女子は勘違いしちゃいますから、ダメですよ」
(あれ、あたし何言ってんだろう)
「え、勘違いって?」なんでこの人鈍感なのかな。。。
「桜井さん、優しすぎなんです、惚れちゃうじゃないですか。」
(あれ、あたし・・・)ふと見上げると彼もぽかんとした顔で私を見ていた。
「ちょっとお手洗い行ってきます」この場から逃げ出したくてなんか心臓とびでそうでうまく呼吸ができなくて、なんだか涙があふれた。
(ダメだ、結婚してる人にときめいたりしない)そう思いながら落ち着かせながら部屋に戻った、「すいません、私全然その男の人になれてなくて、気にしないでくださいね。ごはん食べよおなか減っちゃいました」自分でもわかるくらいの、精一杯の強がりでお願いだから余計なこと言わないでって心から思っていた。
全然頭になんかはいらない上辺だけの会話をしながらご飯を食べた。
会社の話や、休日の過ごし方、確かそんな感じだった、でも何一つ頭に入らなかった。
―ごちそうさまでした―
隠れ家を出ようとすると外は雨が降っていた。
「車まわしてくるから内田さん、ちょっと待ってて」とっさに出た苗字で呼ばれ、(あぁ警戒された)そう思ってうなずく。なんだか少しだけまた胸の中がちくりと痛んで涙があふれた。
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