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「あの時の・・」
私は少しだけ恥かしくなった、声をかけたことじゃなくて、声をかけたことを忘れていたことを。
「あの日ね、僕はもう自殺しようと思ったんだよ、そんな時だったんだよね、あぁ、なんて空は青いんだろう、なんでこの子はこんなに明るい笑顔でわらうんだろうってそう思ったあの日から僕は君が気になってた」
そう言い終わると手をぎゅっと握った。
「話しかけてくれてればよかったのに」
「僕が既婚者だと分かってたら、君の事だからきっと会ってはくれなかったはずだって思ったんだ、それに今日だって」
そう言いながら左手の指輪を外す。
「君が好きだ、ズルいと分かってるんだけど、好きなんだ」
彼の言葉があまりにすっと耳に入ってきて私の思いを告げた。
雨の打ち付ける車内で。。。
「絶対に、家庭を壊さないから、壊さないから一緒に居たい」涙があふれた。
私のこの言葉が悪魔の耳に届いたかのように。
私は悪女になった、もう戻ることのできない、甘いエキスをかいでしまった。
甘いキスが、偽りの愛のキスが、
余りに残酷であまりにもろい二人の関係に
印を押すように私たちの不倫が始まった。
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