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「…そういえば…俺達も今年、去勢か…。めんどうくせぇ。」
「…なんで…そんなこと必要なんだろうな?」
俺は呟くと紫燕は不思議そうに俺を見て首を傾げた。
「…だから…犯罪や感染症減少の為だろ?考案されて完全施行するのに20年近くかかった法律だけど…実際お前の親もしてるだろう?」
「…まあ…多分。」
俺は頭を掻いて適当に応える。
いや…俺は…知っている。俺の両親は…その法律に歯向かっていた。俺は…母の胎内で産まれたのだ。
なぜ…そんな道を選んだんだろ?
頭の中の真っ黒な水面に白い一滴の滴が落ちて、その振動が大きく広がる。大きな白い水の波が大きくなって、一人の女性の姿になっていく。優しく広げ包むその両手に赤ん坊の俺が落ちる。
俺の記憶の彼方にある何かだ。きっとこれは“不完全”な俺だからだ。不完全なことはみんなに隠しているんだけど。
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