2/41
前へ
/139ページ
次へ
 雨がやまない。  しとしと、しとしと。ここ2週間ずっと、雨。  その雨を、私は部屋の中に座り火鉢で手をあたためながら、御簾越しにぼんやりと眺めていた。まだらなグレーの綿が敷き詰められたような雨雲から、絶え間なく流れる幾重もの雨筋。尽きることがないと思わせるほど、間断なく流れる天からの涙は、眺めれば眺めるほどにどこからこんなに降ってくるものかと不思議だった。 だって、つい2週間ほど前には「雨が降らない」とこの地に住む人々から嘆かれていたのだから。  今年は未曽有の雨不足のせいで干ばつや日照りが起こり、作物が育たず、飢える人が出ていたという。実際、私もその有様を少しだけ目のあたりにした。そんなことがあっただけに、この都の人たちにとって待ちわびられていた恵みの雨ともいえる。 「恵みの雨……ね」  とはいえ、まさか2週間も降りっぱなしになろうとは。
/139ページ

最初のコメントを投稿しよう!

138人が本棚に入れています
本棚に追加