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 気分転換の散歩や買出しとかで外へ出ようと思っても、こうも降り続けられるとちょっと。霧雨なら傘をさして出かけられるけれど、この雨では出かける気も起きづらい。絵巻物や貝合わせといったこの世界ならではの古風な室内遊びは、最初のうちはもの珍しくて楽しんでいたけれど、さすがに飽きてきた。 雨続きといっても、土砂降りになった事は最初の1、2度だけ。ずっと雨だから、昼だというのに室内は薄暗い。  雨筋に沿って天から雑多すぎる雑多な庭へと御簾越しに視線を降ろすと、赤く染まりかけた椿の蕾が目に留まった。おかげで冬が間近に来ているのだと感じたけれど、私がこの屋敷に身を寄せることになって、どれだけになっただろうか。曜日感覚どころか時間感覚もつかみづらいこの世界で、来て早々目まぐるしくて、何も数えてなかった……  そう、ここは異世界。  私にとって、なじみの無い世界なのだ。  スマホもテレビもパソコンも無い。外の移動は電車や車、自転車などではなく、牛車か馬か徒歩という3択。排気ガスは無いが砂埃はある。
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