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蓮は見つからないように廊下を歩き出入り口を探した。
『早くここから逃げ出して、桜の元に戻らないと…誰かいる…』
話し声が聞こえた蓮は柱に隠れた。
『部屋にいないと思ったらこんな所にいたのか、部屋に戻るぞ』
雷光は蓮の手首を掴んだ。
『離してください』
蓮は雷光の手を外そうともがいた。
雷光は蓮の手首を掴んだまま引き寄せ耳元で『桜のことを聞きたくないか』と囁き蓮をおとなしくさせた。
『まさか桜に何かしたんじゃあ…』
『俺の部屋で教えてやる』
雷光は蓮の手首を掴んだまま蓮を部屋に連れていった。
シーズンに頼まれ桜と蓮の家にやって来た雪也とアヤメは静かすぎる部屋に嫌な予感を感じた。
『アヤメはリビングとキッチンを頼む』
『俺は風呂場と寝室に行くから』
『わかりました』
アヤメはリビングに雪也は風呂場に行った。
風呂場のドアを開け中を覗いた雪也は『いないか…』と言ってドアを閉めた。
その後、雪也は寝室に行き血のついた小さなナイフとうつ伏せで倒れている桜を見つけ『見つけたぞ』と言って雪也は桜に近づいた。
『桜…』
雪也はうつ伏せの桜の身体を支えながら仰向けに寝かせた。
『…うう…』
『桜、俺だわかるか』
『……』
雪也の呼び掛けに桜は目を開けた。
その時、アヤメが寝室に現れた。
『俺が傷の手当てをするから、アヤメは脈を見てくれ』
『わかりました』
アヤメは桜に近づき桜の手首を優しく掴んだ。
『今、治してやるからな』
苦しむ桜に声をかけると雪也は腹の傷に両手をあて力を注いだ。
それから10分後、脈を見ていたアヤメが口を開いた。
『雪也さん、脈が速くなってます』
『……』
雪也はすべての力を使い桜の腹の傷を治した。
『脈が…雪也さん、桜さんの脈が正常に戻りました』
『そうか…』
力を使いきった雪也はその場で倒れた。
『雪也さん!』
『大丈夫だ、疲れただけだ』
アヤメの声に答えると雪也は壁にもたれ眠りについた。
それから暫くして桜が目を覚ました。
『俺は…』
『気がつきましたか』
『君は?…』
『俺は新人の神、アヤメといいます』
アヤメは身体を支えながら桜を起こした。
『ありがとう…』
アヤメにお礼を言うと桜は壁にもたれながら寝ている雪也に目を向けた。
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