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カランとなるドアを開けて外へ出る。
風がふきゃぁ、まだ肌寒い。特に夜道は冷えるってもんだ。
禁煙を推奨している昨今じゃ、道端ですらタバコは吸えねぇ。
でかいビルの脇にある小道へ入ってタバコを1本咥えた。
ジッポを擦っても火花が散るばかり。
こいつとももう長年一緒に過ごしてきたんだ、そりゃガタもでるってぇもんよ。
もう30年か。
また石でも取替えてやらねぇとな。
長年の相棒は手に馴染む。呑んだ後は吸いたくなるが今日は仕方ねぇ。諦めっか…。
咥えたタバコを戻そうとしたら目の前にオレンジ色の光が揺れる。
「おぉ、兄ちゃんわりぃな。ありがとよ」
遠慮なく近付き火を付けた。
深く吸い込み吐き出してから隣を見やる。
スーツを着た若い男がそこにいた。
「ねぇのか?いるか?」
ポンポン叩いて出てきたタバコを差し出した。
「あ…ありがとう、ございます」
吸ったそばからむせてらぁ世話ねぇな。
「吸えねぇなら辞めときな」
取り上げりゃ赤い顔して俯きやがった。
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