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「や、いいから。俺はマジでいいから。気にすんなって」
「あ、や、うん。つか、気にすんなって無理だろそれ」
突然の雨が、夏服のシャツにひとつまたひとつと染みを広げ
友人の肌に吸い付いていく。
俺は家を出る前に必ず天気予報を確認しないと落ち着かないタイプで、
降水確率が30%を越えると傘を持ち出さずにはいられない。
その甲斐あって、現在、突然の降り出した雨に打たれずに済んでいる。
俺、ひとりだけ。
「気にすんなって言われても気になるって。傘ん中入りなよ。つか入ってお願い」
学校を出た時は真夏の強烈な光線が降り注いでいた。
帰宅部の俺、志村和樹と山口宏明は、いつも通り帰路に着き、いつもの流れで昼休みのゲームの続きをするために俺の家に向かい、最短コースとなる、田んぼのあぜ道を歩いていた。
収穫が迫る、色づき始めた稲穂が一面に広がる。
そこへ突然の通り雨。
俺とは対照的な性格の宏明が、雨が降ってもいないのに傘を持っていることなど到底ありえない。
宏明はスマホとゲーム機だけ鞄の奥深くへ入れ、自身はあっという間に雨に濡れていく。
「だから気にすんなってば。男同士で同じ傘入るとかキモいだろ」
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