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「また痛い思いをさせてごめんなさいね。でも、今度はしっかりやるから安心して頂戴」
写真を拾い上げながら、冷たく言葉を呟く彼女は、手に持ったそれを眺めて、口元を歪めた。
「やっぱり、整形しなくちゃね。お母さんも、【ヤスノリ】も」
凍るような冷気を放つ台詞がスイッチとなって、走馬灯のように俺の記憶が蘇った。
そうだ。
一週間前、俺が帰宅した時。
このリビングで……。
あぁ、そうだ。
この庭には家庭菜園なんて無かった。
真っ赤な薔薇が家族の愛情を象徴するかのように、咲き乱れていた筈だ。
もしや、あの三つの畝……いいや、盛り上がった土は、まさか――
自分の推測が正しければ、俺の本当の家族は……。
早くに両親を亡くし、天涯孤独だった俺に安らぎと愛を与えてくれた妻や息子。
そして、尊敬すべき義母さん。
あの時、俺が見たのは。
フローリングの上で横たわっていた、真っ赤に染まった塊は――――
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