家族の残像

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「なんだ? 今の……あれじゃぁ、まるで。彼女が則子ではないような……」  玄関へと続く扉を見つめて呟く俺の後頭部に強い衝撃が走った。  崩れ落ちる身体。  ガラステーブルに膝を打ち、上に乗せてあった本を道連れに、床に倒れ込む。  横たわった正面にある窓ガラスの向こうには、三つの畝が作られた庭。  チカチカと頭に星が瞬く。  その光の中。  一つ一つに真っ赤なトマトと赤い花弁が交互に入り混じる。  あぁ。  あれは、花びらでもトマトでもない。  血だ。  あれを何処で見た?  一体どこで――  目の前には辺りに散乱した本の中に挟まっていたのか、写真が一枚だけ落ちていた。  意識が朦朧としてきたが、ゆっくりとそれに手を伸ばす。  今ここで、確認しなくてはいけない。  そこに写っているものが何かを、俺は知らなくてはいけない。  大切な。  大切なものがソコに――  あと少しで写真に手が届きそうだという時、俺の手を誰かが踏んだ。
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