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ブルブルと震え出す俺の目の先に、狂気に満ちた女は写真を翳した。
幸せそうに写る家族写真。
そこにいるのは間違いなく、俺の家族。
あぁ、やはり――
涙で視界がボヤける。
再び、頭に衝撃が走る。
薄れゆく意識の中。
彼女達は言った。
「これからは、私達があなたの家族よ」
きっと、あの医者もグルだ。
俺はもう二度と、本当の家族に会うことはないのだろう。
次に目を覚ました時にはきっと……姿かたちまで俺の家族をのっとった彼女達を本物の家族として認識し、生涯騙され続けるのだろう。
庭に咲いていた真っ赤な薔薇が、真っ赤に熟れたトマトへと変貌を遂げたことも気にならないほど、俺もまた、彼女らの変貌に気が付かずに、生涯を終えるのだろう。
そんなことを思いながら、俺は真っ暗な闇の中へと沈んで行った。
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