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僕は、椎菜の親友、梓の前なのに、流れる涙を止めることができなかった。
椎菜の代わりに、椎菜の見られなかった世界を見る。
椎菜の体験できなかった年齢を体験する。
そんなことは考えたこともなかった。
「本当に、椎菜の親は俺に感謝なんかしてるのかな。俺がバイク事故さえ……」
「感謝してもし足りないって、わたしは椎菜のお葬式の時にはっきり聞いてる。椎菜はほんとに保のことが好きで、一緒にダイヤモンドダストを見るのが夢だった。それを最後に叶えてくれたでしょ?」
椎菜が病魔に侵されたのは、いや病魔を発見したのはほんの半年前だった。
病院に行った時には癌のステージ4で、もっても半年、と宣告されたのだ。
まだいたって元気だった椎菜からは考えられなくて、最初はなにかの間違いだとしか思えなかった。
でも、椎菜はみるみる衰えていった。
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