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誰もいない、やっと明け始めた早朝の国道に、まだダイヤモンドダストは降り注いでいた。
バイクのタイヤの摩擦の匂いとガソリンの匂いが微かに漂っていた。
◇◇◇◇◇
椎菜とつき合ってきたこの五年を振り返る。
たいしてモテもしなかった僕にできた、初めての彼女だった。
でも高校一年の僕はただのガキで、椎菜を楽しませるどころか、思っても言えない言葉の数々を脳内にひたすらため込む毎日だった。
その後の五年だってたいした変わりはなかった。
いつだって言葉足らずでまるで成長のない僕に、椎菜はよくつき合ってくれたもんだと思う。
椎菜が何度もしたダイヤモンドダストの話、本当は心の中でいつか見に連れて行くと決めていたのに、それさえ彼女に伝えるのが照れ臭く、いつも気のない素振りでごまかした。
こんなに早く彼女の寿命が終わるとわかっていたら、ここまで僕はヘタレた態度を続けなかったに違いない。
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