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相変わらず、僕はゲーム機から顔を上げなかった。
だけど、その時の椎菜の言葉は一語一句、覚えている。
それからもなにかにつけて椎菜はダイヤモンドダストの話を持ち出した。
いつか見たい、どんなに綺麗なんだろうね、保と一緒に見たいなんて言ったら重い? と茶目っ気のあるアーモンドアイで僕を覗き込んだものだった。
何百年かに一度降るこの街のダイヤモンドダストは永遠の愛。
確かに、たいして好きでもない相手に言われたら重かったのかもしれない。
でも、相手が椎菜じゃ、僕にとってはぜんぜん重くなく、むしろ嬉しくて、いつか絶対一緒に見ような、と心の中で返事をしていた。
口には出せなかったけど、他のもっともっと寒い地域まで足を伸ばしてでも、いつかは二人で絶対に見に行きたいと本気で願っていた。
この街に、ダイヤモンドダストが椎菜のじいさんばあさんの頃に降ったのなら、次に降る頃、僕たちは生きていない計算になる。
僕たちの街は、氷点下までだってなかなか下がらない。
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