第1章

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 “いつかどこかで一緒に見ような”椎菜の横でいつも思っていたのに、僕はこの五年、ついに彼女にその言葉を伝えることができなかった。 ただ単に、照れ臭かったから、というそれだけの理由で。 この街に降る奇跡のダイヤモンドダストは数百年おき。 期待なんかとてもできない。  だけど降ったんだ。 ちょうど二週間前の寒い寒い朝。  窓を開けて僕は叫びそうになった。 大学のテストの日だった。 だけどそれがなんだ! 単位がなんだ、留年がなんだ。 こんな奇跡が、僕たちが生きている間、この街に再び訪れることなんてない。  僕は椎菜のところにすっ飛んで行って、体調のよくなかった彼女を連れだした。 椎菜も興奮しきっていて、熱なんてすっ飛んじゃうよ、と僕のバイクの後ろに飛び乗って、その細い両手を僕の腹にまわした。
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