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“いつかどこかで一緒に見ような”椎菜の横でいつも思っていたのに、僕はこの五年、ついに彼女にその言葉を伝えることができなかった。
ただ単に、照れ臭かったから、というそれだけの理由で。
この街に降る奇跡のダイヤモンドダストは数百年おき。
期待なんかとてもできない。
だけど降ったんだ。
ちょうど二週間前の寒い寒い朝。
窓を開けて僕は叫びそうになった。
大学のテストの日だった。
だけどそれがなんだ! 単位がなんだ、留年がなんだ。
こんな奇跡が、僕たちが生きている間、この街に再び訪れることなんてない。
僕は椎菜のところにすっ飛んで行って、体調のよくなかった彼女を連れだした。
椎菜も興奮しきっていて、熱なんてすっ飛んじゃうよ、と僕のバイクの後ろに飛び乗って、その細い両手を僕の腹にまわした。
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