57人が本棚に入れています
本棚に追加
二人で見たダイヤモンドダストは、この世のものとは思えないほど美しかった。
きらきらきらきらと、頬を切り裂くような澄んだ空気の中、輝きながら舞い散る氷の粒たち。
僕の隣でそれを眺めていた椎菜のほうを盗み見る。
椎菜が、綺麗だった。
触れれば壊れそうなほど、それこそこの世のものとは思えないほど美しくて、儚くて、僕は胸が張り裂けそうになったのだ。
そして、そのダイヤモンドダストを二人で見た帰り道、僕はバイクで事故を起こした。
バックシートから放り出された椎菜を助け起こす。
倒れて起き上がる力もない椎菜に比べて、僕はかすり傷ひとつおっちゃいなかった。
「椎菜! 椎菜! 椎菜!!」
すでに唇は紫色になり、頬に血の気もなかった。
「保……」
「なんだっ?」
聞き取れないほどの声で僕の名を呼ぶ彼女の口元に、自分の耳を持っていった。
最初のコメントを投稿しよう!