僕とおばあさん。

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大きなブラウン管テレビの上にはたくさんのDMと、いつのかわからないハガキが無造作に積まれている。 「おばあさん、ひとり?」 「そう。息子は結婚して違う所に家を建てたの。出張が多い仕事らしくて忙しいんですって。娘2人はそれぞれ嫁に行ったわ」 「旦那さんは?」 そう聞かれると、大きく立派な仏壇の前にゆっくりと座り、 「先に死んでしまったの。脳梗塞。主人は大工をしていたのだけれど、仕事中に転落して車椅子生活……介護はとても大変だったのよ」 昔はレストランへ外食に行くにしても、今みたいにバリアフリーではなかったため、車椅子が入れずにおばあさんが席までおぶって座らせたそう。 職人だった主人はそれから外食には意地でも出掛けなかった。 きっとプライドが許さなかったのね。 と手を合わせながらおばあさんは笑った。 「私、こんなに誰かと話すのどれくらいぶりかしら……」 「……僕もです」 「いいお友達になれそうね」 なんて悪戯した子供みたいに無邪気に笑うものだから、僕も思わず笑ってしまった。 それから僕とおばあさんの不思議な生活が始まったのだが、何せ昼間は僕の姿や声が聞こえないらしい。
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