僕とおばあさん。

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灯りは背後から発散している。 今日の夜よりも深い黒を着ていた。 羽織るマントに金の細工を散りばめたフードを被り、中性的な青白い顔に息を飲むほどの鮮やかな赤い目を持つ人物。 薄い唇が少し開く。 「夜分遅くに。御要件がありましたもので」 気味が悪いほど透き通った声だ。 血管に冷水を注入されたような。 そんな、体が、頭の先から瞬時に冷えて凍りつくような感覚だった。 「ここでは……」 「わ、わかりました。外へ出ます」 「お願い致します」 おばあさんの家から少し離れた場所に、小さな公園がある。 錆び付いたぶらんこと滑り台だけの囁かな物だ。 そこまで移動すると僕は少し怯えながらも問う。 「あなたは一体……」 「お初にお目にかかります。私は死神様の使いの者でございます」 死神……。 僕のような幽霊が実在するのだから、居て不思議ではない。 「そろそろ、あの御婦人の迎えにと使わされたものですから」 「迎え……ってまさかっ!」 「はい」 あのおばあさんは今死なせたら、誰にも気づいて貰えない。 このままでは孤独死に。 「だめだ、せめて家族の誰かに気づいてもらうまでは……っ」 おばあさんはこんな僕を温かく迎えてくれた大切な友人だ。 すると、すっ、と前に出た使いに、僕はびくりと肩を揺らして出かけた言葉を飲んだ。
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