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「貴方様が取り憑いたからでしょう?」
「えっ……」
「元々弱っていたご老体に、霊が取り憑けばどうなります? 貴方様が毎晩のように交信をすればどんどん生気は奪われるのですよ」
そんな。
あの優しいおばあさんを僕が殺すというのか。
「今から離れたらまた回復するよね、するんですよね!?」
「いえ、あの方は貴方様と出会わなくても。少し寿命が減った程度で……」
僕は使いの言葉をろくに聞かずに、人通りのある所まで全力で移動をした。
「だれ、か……誰か気づいて下さいっ!」
見向きもされないのは分かっている。
だが叫ばずにはいられないじゃないか。
あんなに優しく素敵な人が、
孤独に寂しく死んでしまうだなんて!
いいわけない。
「ねぇ、見えない!? 声だけでも聞こえていない!? ……あなたは?」
行き交う色々な人に声を荒らげた。
「おいっ、お願い……っ、お願いします!! 誰か聞いてよ!!」
そうだ、僕と一緒に話すようになってからおばあさんは。
黒ちゃん、今日は何だか胸が苦しくてね……でも大丈夫よ。
そうだ、あんなに酷い顔色で。
黒ちゃん、もう私は歳ね。
と笑った。
そうだ、全部僕と出会ってから……。
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